約40%の患者さんに軽度の脂漏性皮膚炎
薄毛、脱毛にどう対処していくかは、それぞれの患者さんの状態によりさまざまです。まず、頭髪、頭皮の状態から、仕事や日常生活の状況も含めて、実状をよく観察して、髪の毛に悪い影響を与えている問題点がないかどうかを探っていくことになります。
頭髪専門のクリニックを訪れる患者さんたちの頭皮の状態を観察してみると、半数以上の患者さんの頭皮は健康な状態にありますが、約40%の患者さんに軽度の脂漏性皮膚炎(毛穴など皮脂の分泌の多い部位に赤っぽい湿疹ができる症状)が見られます。
こうしたトラブルに対しては、ケトコナゾール(塗り薬)やケトコナゾール入りシャンプーなどを使用することによって、多くの場合、頭皮の状況は改善します。脂漏性皮膚炎を引き起こす原因について、マラセチア菌という皮膚の常在菌が関与していることがわかってきました。ケトコナゾールは、このマラセチア菌に対して有効な作用をもつ抗菌剤です。
頭皮をゴシゴシ強くこすらないで
テレビや雑誌などの影響が大きいと思われますが、フケやアブラを「髪の毛への害悪」「ハゲの元凶」と目の敵にして、シャンプー、ブラッシング、頭皮マッサージなどで過剰に頭皮をこすってしまい、そのために、頭皮が荒れたり、皮膚に発赤などの炎症所見が見られる患者さんがいます。
たしかに頭部のフケヤアブラを放置すれば、頭皮の環境が悪くなり、人によっては枇糠性皮膚炎、脂漏性皮膚炎と呼ばれる状態になることもあります(「批糠」は乾いたフケ、「脂漏」は毛穴周りのアブラのことです)。その結果、頭皮の血流が悪化し、髪の毛によくない影響が出ることも考えられます。
しかし、フケやアブラをとことん取り除こうと、あまりゴシゴシ強くこすりすぎると、頭皮を荒らしたり、炎症を起こしたり、頭皮にとってかえつて好ましくない結果を引き起こしてしまいます。フケヤアブラが少々あるからといって、それですぐに薄毛や脱毛がどんどん進むということではありません。大事なのは、頭皮を適度に清潔で健康な状態に保つことです。
実際の治療のなかでも、それぞれの患者さんに合った皮膚への刺激が少ないシャンプーの選択と、よりやさしい髪の洗い方を指導することで、多くの患者さんの頭皮状況が改善しています。